研究概要 |
本年度は,ラット臼歯に窩洞形成を行った後の歯髄におけるMMP-3, MMP-13, TIHP-1などの遺伝子発現の局在をin situ hybridization法にて明らかにすること,そしてそれら遺伝子の修復象牙質形成時の働きについて解析を行うことを目的とした。まず,これら3つの遺伝子発現の局在についてinsitu hybridization法にて解析した結果,ラット臼歯窩洞直下の歯髄において、窩洞形成後3日目にMmp13の発現認められた。また,窩洞形成直後および1日後,3日後にTimp1の発現が確認された。特にTimp1は,Mmp13と比較して広い領域に継続して発現しており,歯髄の治癒に与える影響がより大きいものと推測された。そこで,in vitroにおいてマウス象牙芽細胞様細胞株HDPC-23をTIMP1添加条件下で培養したところ,増殖能に関しては添加したTIMP1の濃度依存的に抑制傾向を示し,石灰化は50ng/mlのTIMP1を添加することで有意に促進された。これらのことから,TIMP1が修復象牙質の石灰化に関与している可能性が示唆された。また,これまでに骨芽細胞の分化の際にTimp1の転写をWnt/β-catenin経路が制御していること,および骨折時や軟骨組織が機械的な刺激を受けた時にWnt/β-catenin経路が活性化されることが報告されている。そこで,窩洞形成の刺激によってもWnt/β-catenin経路が活性化されるのではないかとの仮説を立て,窩洞直下歯髄におけるβ-cateninタンパクの局在について免疫組織化学法を用いて現在,検討を行っているところである。
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