研究概要 |
申請者らは平成21~22年度の研究において,顎顔面領域の神経障害性疼痛においても,脊髄が中継する痛みと同様にグリシン神経機能の変調が疼痛の発症に重要な役割を果たしており,この様な疼痛にグリシントランスポーター(GlyT)阻害薬が有効であることを明らかにしてきた.歯髄の可及的保存治療には炎症歯髄の炎症消退が不可欠である.申請者らは炎症のメディエーターとして知られている血小板活性化因子(PAF)が,脊髄でグリシン抑制性神経機能に影響して疼痛のメディエーターとして重要な役割を果たすことを明らかにしてきている. PAF受容体阻害薬は歯髄痛をはじめとする各種疼痛に対して鎮痛効果が認められている.前年度までの報告に引き続き,種々の疼痛(がん性疼痛モデル,化学療法薬における末梢神経障害性疼痛モデル)いおいても強力な鎮痛効果を認めた.さらにPAF受容体阻害薬の前処置で,種々の疼痛発症を阻害することができた. これらの成果はPAF受容体阻害薬が各種疼痛疾患における有効な治療薬となる可能性を示すもので,種々の疼痛の発症に深く関係することが明らかとなった.歯髄炎や歯周組織の炎症に起因した疼痛の治療に有望な治療薬となる可能性ならびに種々の治療等に起因する疼痛に対する予防的処置への有効性が示された.PAF受容体阻害薬は既存の鎮痛薬とは全く異なったメカニズムで作用しており,新規治療薬開発の基礎的基盤を与えるものと期待される.
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