間葉糸幹細胞用無血清培地(STK2)と無血清石灰化誘導培地(STK3)か、すでに、骨髄由来間葉系細胞の増殖能・分化能を著しく亢進させていることから、今回、ヒト歯髄細胞を間葉系幹細胞用無血清培地STK2、および無血清石灰化誘導培地STK3で培養し、10%ウシ胎児血清(FBS)を使用する従来の方法との違いを、増殖能および石灰化誘導能について比較検討をおこなった。 実験に用いた歯髄細胞は歯髄組織からoutgrowth法にて採取し、STK2もしくは、10%FBS含有DMEMにて7日間培養した。細胞増殖能はCell Counting Kit-8を用いて評価し、同様に培養した歯髄細胞を、STK3血清含有骨分化誘導培地で分化誘導し、real-time PCRによるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性の検討、およびアリザリンレッド染色を行った。 その結果、STK2で培養したヒト歯髄細胞は10%FBS含有培地で培養した細胞と比較して高い増殖率を示した。また、従来の骨分化誘導培地に交換した後、ALPの高い上昇と早期の石灰化物産生が観察された。しかし、STK3で培養した歯髄細胞は石灰化分化誘導を示さなかった。STK2で培養したヒト歯髄細胞は増殖能と分化能が著しく亢進したが、STK3は骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)と異なり歯髄細胞の分化誘導の抑制を示した。 以上の実験結果よりSTK2によるヒト歯髄細胞の培養は再生治療に有望であることが明らかとなり、臨床応用へ転換可能が大いに期待できる。また、骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)と歯髄細胞の石灰化分化過程は異なるメカニズムで誘導されていることが示唆されたといえる。
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