研究概要 |
〈背景〉歯の発生が上皮・間葉相互作用によって制御されることからin vitroでの歯髄由来細胞の石灰化においてもAmeloblastを利用することによって石灰化を亢進できると考えられた。そこで、石灰化誘導培地(ascorbic acid,dexamethasone,β-glycerophosphateを添加した10%FBS含有DMEM)でインキュベートしたマウス由来Ameloblast lineage cell (ALC)のconditioned medium (ALC-CM)が歯髄細胞の石灰化に及ぼす影響を検討した。 〈方法と結果〉Confluentまで増殖させたALCを石灰化誘導培地で培養し、回収した上清をALC-CMとする。 1.石灰化誘導培地にそれぞれ0-50%の割合でALC-CMを混合して、confluentまで増殖させた歯髄細胞に対して分化誘導を行った。その結果、ALC-CMは早期に石灰化物形成を誘導し、そしてALC-CMの濃度依存性に石灰化を促進した。 2.石灰化誘導培地に50%の割合でALC-CMを混合した培地で歯髄細胞の分化誘導を行った後、total RNAを回収し、real time PCR法によりAlkaline phosphatase(ALP), osteocalcin(OCN)のmRNA発現を調べた。ALC-CMはALP mRNA発現量に影響しなかったが、OCN mRNA発現量を早期に上昇させた。 〈考察〉ALC-CMは歯髄細胞の石灰化を促進し、通常ALPとOCNのmRNA発現には相関があると言われているが、ALC-CMにより石灰化誘導が促進された歯髄細胞ではALPを介さずOCNのみが影響を受けていたので、ALC-CMによる石灰化には独自のメカニズムを介することが示唆された。また、マウス由来ALCは歯髄細胞の石灰化を促進する因子を分泌していることが示唆された。
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