研究概要 |
我々は、以前より、アスコルビン酸と塩化第二鉄が次亜塩素案ナトリウムの悪影響を打ち消し(Soeno et al, Dent Mater J 23(2), 2004)、高い接着強度とともに、高い接着耐久性をもたらすことを報告してきた(Soeno et al, J Biomed Mater Res B 73(1), 2005)。また,長期水中浸漬試験において、10-3処理では、接着強度が経時的に低下するものの、この試作処理方法により、3年間、接着強度の低下は認められなかった(添野光洋ほか、接着歯学25(4),2007)。すなわち、象牙質コラーゲンを化学的に除去することにより,4-META/MMA-TBBレジンと象牙質の接着耐久性が向上することを示唆した。 しかし、アスコルビン酸は水に溶解後の保存安定性が悪いため、臨床応用は現状のままでは困難であることがわかった。また、すべての処理に水洗を含み,操作ステップが多い。このシステムを確立させるためには、臨床応用を実現するためには、表面処理材の保存安定性を高めるとともに、少しでもステップを少なくする工夫が必要である。 一方、アスコルビン酸は、エタノールやアセトン、HEMAといったプライマーに含まれる代表的な溶媒には溶解しない,ところが,プライマーに含まれる代表的な溶媒である2-hydroxyethy1 methacrylate (HEMA)に脂溶性のビタミンE(トコフェロール)は溶解する。そこで、HEMAとビタミンEの水溶液に、塩化第二鉄を含有させた試作プライマー液を作製し、リン酸、次亜塩素酸ナトリウムで処理した象牙質に試作プライマーを塗布、4-META/MMA-TBBで接着させたところ、次亜塩素酸ナトリウムの悪影響を受けないこと,さらに、この試作プライマーは、保存安定性も高く、水洗ステップも省ける可能性が示唆された.
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