研究概要 |
口腔環境に曝された修復物は経時的に劣化することは避けられず,再修復がされることになる。今回,申請者は,修復物の口腔内における状況を客観的に判断するための基礎的資料を得ることを目的として,初期硬化反応や弾性率の変化が修復物の予後に影響を及ぼす重要な因子となることから,非破壊試験である超音波測定装置を用いることによって,光重合型充填用レジン強化型グラスアイオノマーセメントの光線照射初期条件における硬化挙動と弾性率について経時的に測定した。 硬化挙動の測定における照射条件は600mW/cm^2,200mW/cm^2および照射なしの3条件とした。各製造者指示条件に従って練和したセメント泥を,シリンジを用いて内径5mm,高さ2mmの透明型に填入し,これを試料台に乗せて試片を透過する超音波の伝播時間を求め,測定された試片の厚さとから超音波の縦波音速を算出した。弾性率については,照射して硬化した試片の縦波および横波音速を測定し,試片の密度とから理論式を用いて算出した。 その結果,セメント内部において,その硬化が進行すると内部を伝搬する音速も速くなるが,その傾向は供試したレジン強化型グラスアイオノマーセメントによって異なるものであった。すなわち,光線照射によって音速が急激に速くなるもの,比較的緩徐に進行するものの2つのグループに分類できた。また,光線照射によって急激に硬化が進行する製品では,とくに光強度の違いによる硬化挙動にも違いが認められた。弾性率の測定では製品間で異なる値を示したが,全ての製品において1週間後までに緩徐に上昇し,4週間後では低下する傾向が認められた。以上の結果から,レジン強化型グラスアイオノマーセメントの水中浸漬に伴う初期硬化反応の進行には,光線照射条件が大きく影響するとともに,その傾向はグラスアイオノマーの種類によって異なることが明らかとなった。また,弾性率の変化についても製品によって異なることが示された。
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