研究概要 |
近年,齲蝕リスクの低減化あるいは脱灰と再石灰化という動的平衡をコントロールすることの重要性が宣伝されている。このような観点から,歯質の積極的な再石灰化あるいは脱灰抑制を目的として,多種のイオンを徐放するPRGフィラーを含有したコーティング材が開発された。そこで,PRGフィラー含有コーティング材を歯質に塗布した際に生じる状態変化を,Optical Coherence Tomography(以後,OCT)を用いて非破壊的に観察し,検討を加えた。 ウシ下顎前歯唇側エナメル質を4×4×1mmのブロックとして切り出し,これを測定用試片とした。この試片の表面に対して,PRGフィラー含有コーティング材を塗布したもの,あるいは塗布を行わないものの2条件を設定した後,37℃人工唾液(pH7.0)あるいは精製水中に30日間浸漬保管した。保管中の試片について,OCT装置(モリタ東京製作所)を用い,歯質に生じる状態変化を経時的に観察した。また,所定の保管期間が終了した試片については,コーティング材を探針にて除去し,レーザ顕微鏡(VK-8700,KEYENCE)を用いて表面性状の観察を行った。 その結果,人工唾液保管群におけるコーティング材塗布直後のOCTイメージ像からは,塗布面表層とその下方に強度分布を示す画像が得られ,その信号強度を解析したグラフからは,最大ピークのほかに信号の増強部が検出された。一方,実験期間の延長に伴い,コーティング面表層でのシグナルは減少し,その部位での信号解析からは,ピーク幅の拡大が認められた。また,非コーティング面の歯質は,塗布直後に比べ表層でのシグナルは増加し,そのグラフ解祈より信号強度は増幅していることが判明した。 以上の結果から,PRGフィラー含有コーティング材は歯質に生じる脱灰を抑制し,再石灰化を促進する可能性を有することが示された。
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