研究概要 |
エナメル質表層下脱灰病巣に侵入した有機質を分解する手段としてオフィスブリーチング剤であるハイライトを使用するが,本剤がエナメル質ならびにエナメル質脱灰病巣を進行させないことを確認する目的で,エナメル質に塗布した場合の歯質耐酸性の変化ならびに表層下病巣に適用した場合の変化をTransversal Microradiography(TMR)で確認した。その結果,ハイライトはエナメル質に適用した後もエナメル質の耐酸性を低下させないこと(Journal of Dental Health 59,125-131,2009)ならびに表層下病巣に適用しても病巣を進行させないことを確認した(日本歯科保存学会2010年度春季学術大会:P22で発表予定)。これらの結果は代表的なオフィスブリーチング材であるHi-Liteにはエナメル質表層下脱灰病巣いわゆる白斑病巣を進行させる危険性は少なく,再石灰化を効果的に誘導する手段として表層下病巣にハイライトを使用することの安全性を示すものである。さらに,本研究で用いられる再石灰化溶液と二層法による脱灰試験を用いて知覚過敏材料の象牙質再石灰化誘導能の実験もを行い,フッ化物徐放性知覚過敏材料が効果的に象牙質の再石灰化を誘導することを確認した(日本歯科保存学会2009年度秋季学術大会)。これらの結果を踏まえて,エナメル質表層下脱灰病巣を口腔内に一定期間装着し,唾液中の有機質を取り込ませ,その後漂白処理を行った場合に再石灰化量が向上するか否かを検討する研究を行った。その結果,ハイライト使用群と非使用群とで再石灰化量に有意差は認められなかった。その原因として有機質が病巣内まで入り込んでいなかった,または病巣内まで有機質が入り込んでいるが深度が浅くハイライトで除去されても口腔内に戻した時点で同程度まで侵入してきたため非漂白群と差がでなかった可能性が考えられた。22年度では,唾液有機質以外の有機質も選択肢に入れ,これらを表層下病巣に確実に侵入させることのできる方法を用いて再石灰化誘導における漂白剤の効果を検討する予定である。
|