研究概要 |
顎関節症の発症因子の一つとして歯ぎしりやくいしばりなどの口腔習癖であるブラキシズムが注目され,その因果関係について多くの研究がなされてきた.しかし,その関係は十分には解明されていない.ブラキシズムは,日中覚醒時ブラキシズムと夜間ブラキシズムに分類され,夜間ブラキシズムはさらに睡眠時ブラキシズムと夜間覚醒時ブラキシズムに分けられる.本研究の目的は,歯ぎしりやくいしばりなどのブラキシズムと顎関節症の関連性を解明するための一助として,顎関節症患者の覚醒時ブラキシズム(日中覚醒時および睡眠途中覚醒期)の実態を明らかにすることである. 臨床所見で歯ぎしり,顎関節症の何れも認めない健常者と歯ぎしり患者,顎関節症患者を対象とし,超小型無拘束ウェアラブル筋電図測定システムと睡眠ポリグラフを用いて日中および夜間の咬筋活動を記録した. 健常者の日中覚醒時の筋活動において,食事以外の日中覚醒時の筋活動は終日総筋活動量の数%から約60%を示し,全般的に食事時間中に比べると小さかったものの個人差はみられた.夜間筋活動量は日中筋活動量と比較しても非常に小さく,終日総筋活動量の数%程度であった.歯ぎしり患者の夜間データの睡眠期と睡眠途中覚醒期の筋活動を解析したところ,睡眠中途覚醒期が波形個数では約30%,筋活動量(波形積分値)では約40%を占めていた.顎関節症患者の終日データでは,個人間の差が大きかったが,夜間の筋活動が正常範囲にもかかわらず,食事時間帯以外の日中に高頻度で大きな筋活動を示すものも見られた. 以上より,ブラキシズムの生体への影響を考える上で,睡眠時データだけでなく,夜間睡眠途中の覚醒期や日中覚醒期の筋活動にも十分に注意を払う必要性が示唆された.
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