研究概要 |
われわれはピエゾフィルムを頸部に貼り、得られるピエゾ波形から嚥下機能を評価する方法を考案した。本装置は非侵襲的に嚥下運動が測定でき、同一条件の嚥下運動で得られる波形は高い再現性がある。さらに、われわれは本装置で得られる波形から嚥下咽頭期の舌骨の運動を評価できることを見出した。これまで嚥下咽頭期の機能評価はX線嚥下造影検査に頼ることが多いため,放射線被曝をはじめ倫理的にも制約が大きい。多くの研究者が嚥下障害を舌骨の運動に着目して障害の評価,治療効果の基準としてきたが,多くはX線嚥下造影検査に頼るものであった。しかし、本装置を用いた測定はベッドサイドでの測定が可能であり,嚥下動態を極めて安全にかつ高精度に分析することが可能となり、嚥下障害者における診断および治療経過の評価のみならず健常者における嚥下機能の多面的な解明にも応用できる。 初年度にピエゾ波形とX線嚥下造影検査の画像を同期させ、そこから予測される舌骨の動きと嚥下動態の関連付けを行い、舌骨の後方移動をS1,前上方移動をS2,舌骨が元に移動する動きをS3とした。 当該年度に20名の健常被験者を対象にピエゾ波形による正常嚥下の基準値作成を行うために、空嚥下、蒸留水1,3,5,10,15mlによる嚥下時のピエゾ波形のS1,S2,S3の変化を解析した。その結果、健常者では、5ml,10mlの嚥下波形で固体内変動が少なく、安定した波形解析を行うことが可能であった。空嚥下および1mlによる嚥下では、S1,S2の潜時は不安定であったが、確実な嚥下に対して波形パターンは同じ傾向を示した。嚥下障害者では、空嚥下あるいは、0.4ml以下の極少量の水を咽頭上部に滴下する誘発嚥下で安全に嚥下検査が実施できることから少量嚥下のピエゾ波形の解析による嚥下評価が可能であることが示唆された。
|