| 研究概要 |
安定した増粘剤の開発を目的として,低粘性液体(ニュートン流体)の粘性を変化させた際の生体反応について検討した.低粘性の液体として水とミルクを用いた平成21年度研究の結果から,粘性がやや高いミルク嚥下時の口蓋帆挙筋活動は水での活動量よりも有意に小さいことが明らかであったが,粘性の変化によって筋活動が変化するかは不明であった.そこで市販ミルクに混合量を変化させた水を加えて粘性を低下させた際の嚥下時筋活動について検討した.口蓋帆挙筋活動は一貫した反応パターンを被験者に共通して示したが,口蓋舌筋活動については二峰性の活動が認められる場合が見られた.二峰性の場合,口蓋帆挙筋活動の前に第一峰があり,口蓋帆挙筋活動のpeakの後,個人毎に一定の時間差で第二峰が見られた.解析の結果,口蓋帆挙筋活動は粘性の低下とともに上昇して水での筋活動に近付いたが,口蓋舌筋活動については相関性は見られなかった.すなわち,口峡の開大量は粘性に相関する可能性を指摘した平成22年度の研究結果での仮説の正当性を裏付けることになった.
意義:嚥下時の咽頭への送り込みの入口である口峡の開大量は,誤嚥の原因となるニュートン流体の場合,その粘性を検出して調節されることが明らかになった.すなわち,嚥下時の口峡の開大は,既に報告しているように口腔内の食物量に加えて粘性を検出して多様な口蓋帆挙筋活動によって行われていることが明らかとなった.
重要性:誤嚥リスクが高い場合には上市されている増粘剤を用いることが行われているが,その際の粘性の調整が無定見に行われた場合には容易には誤嚥症状は改善できないことが示され,安定した増粘剤の開発とともに食事提供の方法についても検討する必要があることが示された.
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