研究課題/領域番号 |
21592447
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
舘村 卓 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (60188266)
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キーワード | 筋電図 / 口蓋舌筋 / 口蓋帆挙筋 / 至適嚥下量 / 口腔相 / 咽頭相 / レオロジー |
研究概要 |
本研究当初予定では平成23年度に非ニュートン流体試料を作成し,物性分析と官能試験を行い,その結果を基に,平成24年度において口蓋帆挙筋ならびに口蓋舌筋の筋活動を指標にして,嚥下機能に負担の少ないトロミ食品の試作品を作成する予定であった.平成22年12月から,当初予定にしたがって,それまでに得られた筋電図信号の解析を開始した.その結果,目視での筋電図信号の観察とpeak波形のt-testの結果との乖離が生じた際に行う予定であった波形面積による作業量の比較を行ったが,波形パターンに当初予測できなかった単峰波形と多峰波形が存在することがわかった.当初作成した筋電図波形面積の測定プログラムが単峰波形だけに対応していたため,多峰波形にも対応できるように波形面積測定プログラムを修正改変し,新たに開発したプログラムの再現性の確認のために当初の実験での被験者以外に追加して被験者を募集した上で筋電図を採取し分析した.その結果,口蓋舌筋活動では,多峰性の筋電図波形の第二峰目が被験者間で共通して口峡の再閉鎖のタイミングと一致していた.口蓋帆挙筋活動の一峰性波形のpeakから口蓋舌筋活動の第二峰目のpeakまでの間の時間に口腔から咽頭に送り込まれる量が一回嚥下量であることが判った.楽に嚥下できる1口量であることが判った.さらに,この時間は個人毎に一定していた. 意義と重要性:本研究の結果は,口峡の開大時間が個人毎に一定であり,口腔内の食物量や物性に依存しないことは,口峡の開大時間に良好に口腔から咽頭に通過できる特性を有する食物が安全な嚥下を支援できるものであり,また本研究で確立した筋電図による試験法を用いることで,トロミ食品試作の段階から多様な嚥下機能のレベルに応じた物性条件を検討することが可能になったことに重要性と意義がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
口蓋帆挙筋活動の嚥下時波形が単峰性であり,口蓋舌筋についても嚥下時波形が同様の単純な波形であると当初想定していたが,実際に採取できた筋活動は当初想定よりも複雑なパターンを示した.そのため,一旦本来予定していた研究を中断して波形面積測定・解析のためのプログラムを急遽作成することが必要になり,そのプログラムの信頼性試験を新たに被験者をリクルートして確認するための追加実験に時間を要したことと再現性の検証が必要になったため.
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今後の研究の推進方策 |
筋電図波形の測定プログラムの信頼性が担保できたことから,当初予定に従って,ニュートン流体ならびに非ニュートン流体の試験食品を試作し,官能試験と口蓋舌筋ならびに口蓋帆挙筋の筋電図を指標にして,食品のレオロジー特性の咀嚼運動への影響を検討して,実際の介護の現場で求められるトロミ食品の条件を明らかにする.
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