研究課題
平成23年度に新たに開発した筋電図波形面積測定プログラムによって,食品の粘性と嚥下量を変化させた際の口蓋帆挙筋と口蓋舌筋の活動について予備的に調べた.その結果,口蓋帆挙筋活動は,B型粘度計で測定した粘度と一回嚥下量説明変数とする重相関式で説明できたが,口蓋舌筋活動については,相関性が低いことがわかった.すなわち,口蓋舌筋は食品物性や量に依存して活動を調整するのではなく,口蓋帆挙筋活動に対応して活動し,口蓋帆挙筋活動は,食品の物性と量に応じて調節されることが示された.そこで,以後の試験では,口蓋帆挙筋だけを指標にして検討した.一般的に,食品は粘度がずり速度によって変化する非ニュートン流体であることが多い.すなわち,ヒトが食品を口腔から送り込む際には,舌を口蓋に押しつけることで咽頭方向への推進力(ずり速度)を発生させている.すなわち,口腔内では,B型粘度計で測定する定常ずり粘度ではなく,ずり速度依存性粘度が変化していると考えられる.そこで,B型粘度計で同じ粘性を示すものの,ずり速度依存性粘度は2/sec以上では異なる非ニュー流体による試料を3種類作成し,同一量を嚥下した際の口蓋帆挙筋活動を測定した.その結果,口蓋帆挙筋活動は,ずり速度依存性粘度が高いほど小さくなることが示された.すなわち,同一量の嚥下時に,ずり速度依存性粘度が高い食品では口峡の開大量は少なくて済むことが明らかとなった.意義と重要性:要介護高齢者向けのトロミ食品を作成する場合,通常用いられるB型粘度計での粘性を参考にするのではなく,ずり速度依存性粘度を調整することが必要であることが示された.さらに,筋電図を用いることで,官能試験のような主観的評価ではなく,客観的にトロミ食品の生体への影響を評価できることが示された.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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