研究課題
ジルコニアにはリン酸の吸着作用があると想定されたことから、ジルコニアの清浄表面に10-MDPを作用させ、余剰の10-MDPを十分に洗浄除去したのち、光電子X線分光法(XPS)にて測定した。この結果、ジルコニアは10-MDPを吸着することが明らかになった。ジルコニア接着界面の観察では、ジルコニアの表面処理として用いられることの多いロカテック処理を施し、処理面の表面観察と断面観察を行った。断面観察はロカテック処理表面を断面SEM法、断面TEM法で観察した。断面TEM法は高分解能観察に適しているが、広い範囲の観察に不適である。特に、ジルコニア/セメント/歯質接着界面の観察には、集束イオンビーム加工法(FIB)による薄膜化が適していると考えられ、この手法による試料作製の問題から5μm程度の範囲しか観察できない。断面SEM法は1mm程度の範囲を観察できる。さらに、数万倍の観察でも接着界面の解析ができる情報をもたらす。断面SEM観察で広範囲の観察を行い、特定場所をFIBで断面TEM試料に加工することは、接着界面を詳細に観察する上で、重要な技術といえる。ジルコニア表面をサンドブラスト処理で粗面にしたのち、10-MDPで表面処理、セメント接着し、せん断試験を行うと、セメント部での破壊が起こる。これは、実用上十分な接着強度が得られていることを意味している。ジルコニアとセメントとの接着力を評価するためには、ジルコニアの接着表面を粗面にすることなく、焼成されたままの状態で行うのが良いと思われる結果が得られている。これは、ジルコニア表面が滑沢なために、接着面積が小さくなり、接着強度が落ちているためと考えられる。この方法は、ジルコニア/セメント接着界面の強度を評価するのに良い手法と思われる。
すべて 2010
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Acta Biomaterialia
巻: 6 ページ: 3573-3582