研究概要 |
ジルコニア表面の機能性モノマーによる修飾では,歯科用リン酸モノマーの利用が,臨床での取り扱い,接着強度の点から推奨できる。有機修飾前のジルコニア表面処理は,以下に提案する方法によれば,不要であることが見出せた。 歯質・ジルコニア界面全体を同時に観察するには,アルゴンイオンによる断面観察試料をSEM観察するのが適当であった。 臨床応用できるジルコニア・歯質接着法を以下のように提案した。(1)ジルコニアはサンドブラスト処理で研削速度が早く,機械加工による相変態が起こる。特に補綴装置辺縁部などの薄い部分では応力による変形の可能性があるため,サンドブラスト処理等の機械加工は行わない。(2)臨床で,だ液等で汚染されたジルコニア表面は流水で十分に洗浄する。この際,欠けや相変態を防止するために超音波洗浄は行わない。(3)水洗後のジルコニアは十分にエアー乾燥させる、(4)ジルコニア表面は歯科用リン酸モノマー(10-MDPが優れる)による表面修飾が有効である。だ液等の汚染層を除去しながらジルコニア表面を有機化するために,処理剤にシリカを添加してジルコニア表面を擦るように塗りつける。10-MDPとシリカフィラーを含有する歯質接着剤の利用が良い結果をもたらす。歯質接着剤を利用する場合,塗布後に十分エアー乾燥させ,光照射で硬化させる。(5)合着セメントで歯質と接着させる。この方法の利点を以下に述べる。(1)焼結後のジルコニア表面汚染に加えて,臨床を想定した,だ液汚染があっても強い接着が得られる。(2)ジルコニアの問題点と考えられていた相変態を伴う,機械加工(サンドブラスト)や超音波洗浄を利用しない(提案した接着方法は,サンドブラスト処理,超音波洗浄を禁止した),(3)専用のジルコニア表面処理剤を使用しなくても,歯質接着剤の利用で強い接着が得られる。(4)操作,手法が簡便である。(5)専用の器具を必要とせず,低コストである。
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