研究概要 |
本研究の目的はインプラント周囲の炎症を未然に察知するためにインプラント周囲の炎症性歯肉を採取し特異的な生物学的マーカーを同定することである.昨年度に引き続き,当科で口腔インプラント治療を行った患者の中でどれだけの患者がインプラント周囲炎によりインプラントを喪失しているのかを把握する目的で,これまでに当院で口腔インプラント治療を行った患者のデータベースの整理を行った.過去15年間に当科にて口腔インプラント治療を行った全患者は453名であった,これらの患者に埋入されているインプラント体1本1本について追跡調査をおこないインプラント周囲炎の発症頻度ならびにインプラント周囲に炎症を引き起こすリスクファクターについて調査した.また,インプラント周囲に特異的に炎症が起こるのか(隣在歯から炎症が波及しているのではないか)を確認するためにインプラントの隣在歯に起こるトラブルの詳細を同時に調査した. 《方法》 1.1990年2月から2007年3月までの間に当科にて口腔インプラント治療を受けた全患者393人1062本の中でオッセオインテグレーションが獲得されたものが721本であった.これらのインプラント体を対象に多変量解析による生存分析をおこなった 2.多数歯の遊離端欠損患者に対して,インプラント群と可撤性部分床義歯群を選別し,欠損の隣在歯におこる炎症に起因するトラブルの発生を生存分析を用いて比較した 《結果》 1.インプラント体の10年累積生存率は94%であり.10本のインプラント体が除去に至っていた.インプラント体が除去に至るリスク要因は上部構造が術者可撤式である事と喫煙習慣である事が明らかとなった 2.インプラントと可撤性部分床義歯では欠損部の隣在歯におけるトラブルの発生率は有意に可撤性部分床義歯の方が高かった 今後はこれらの結果をふまえてインプラント体を除去するに至ったインプラント周囲炎をもった患者のインプラント体周囲歯肉からインプラント周囲に起こる炎症の特異的なマーカーを具体的に調査していく予定である
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