研究概要 |
形態的、材料学的問題から義歯の清掃は困難であるため、義歯装着者では口腔内環境が悪化し、口腔カンジダ症や誤嚥性肺炎を発症しやすくなることは広く知られている。本研究の目的は義歯材料に光触媒機能を付与し、易清掃性の材料を開発することである。ティッシュコンディショナー(ティッシュコンディショナーII、(株)松風)に異なる濃度の光触媒アパタイト(PHOTOHAP、太平化学産業)を混合した試料を作製し、JISZ2801に準じて抗菌試験を行った。実験に供した菌はE coli、S aureus、mutansおよびC albicansである。暗所下で試験片にそれぞれ濃度調整した菌液を滴下し、0,2および4時間の紫外線照射(352nm)後、菌液を回収、希釈した後、寒天培地に播種、培養してできたコロニー数をカウントした。すべての菌で、10-、15-および20wt%含有試料のCFU値は非含有試料の値より小さく、含有量の増大に伴い小さくなった。またすべての菌で紫外線照射した10-、15-および20wt%含有試料でのCFU値は非照射試料より小さい値を示し、照射時間の長さに伴い小さくなった。このことから光触媒を含有したティッシュコンディショナーは抗菌・抗真菌効果を獲得し、その効果は光触媒濃度と照射時間に依存すると考えられた。次に重合後の抗菌・抗真菌効果の持続性について実験を行った。抗菌・抗真菌効果は15-20wt%含有試料でE.colfは3日、S.mutansは14日、20wt%含有試料でS.aureusは3日、C.albicanは1日持続した。走査型電子顕微鏡による表面性状の観察では、すべての試料で重合後時間の経過とともに、表面が粗〓になり、表面に分布する光触媒が減少していた。重合後、可塑剤が溶出することは報告されており、可塑剤の溶出とともに光触媒が流出したこと、可塑剤の溶出による表面荒れが紫外線照射の効率を悪くしたことが推測される。これら表面性状の変化が抗菌・抗真菌効果の持続をさまたげたと考えた。
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