研究概要 |
本研究の目的は,部分床義歯のクラスプデザインが義歯床の動揺や支台歯の負担圧にどのような影響を与えるのかを解析し,部分床義歯設計理論による違いを明らかにすることである。 昨年度まで,右下第1小臼歯を支台歯とする右下第2小臼歯から第3大臼歯欠損への部分床義歯のシミュレーションモデルを用いて,強固な拮抗腕を備えた把持作用の高いクラスプを用いたほうが義歯床の変位量が小さく,一方,支台歯に加わる圧力は大きくなるが多くは垂直方向に加わるもので水平方向への圧は把持作用の低いクラスプを用いた場合よりも小さくなることが明らかとなった。 本年度は,このシミュレーションモデルに間接支台装置を設置することの効果の解析を行った。直接支台装置は右下第1小臼歯にレスト位置や維持腕と拮抗腕の形態が異なる6種類のクラスプを義歯床内のメタルベースにネジ固定で置換した。間接支台装置は左下第2小臼歯と第1大臼歯に設置する双子鉤とし,拮抗腕が弾性に富むタイプと強固なタイプの2種類をメタルベースに同様にネジ固定で置換した。これら12通りの組み合わせで,右下第1大臼歯の人工歯部に定加重を加えた時の義歯床の変位量と右下第1小臼歯に加わる圧を測定した。 義歯床の変位量は直接・間接支台装置のいずれにも強固な拮抗腕を用いた場合が最も小さく,また,直接支台装置を設置した右下第1小臼歯に加わる圧の間接支台装置追加による軽減率は,この組み合わせの場合が最も大きかった。 以上の結果は,義歯床の動揺を最小化して義歯による機能回復効果を高めるとともに,支台歯の負担加重を回避するには,強固な拮抗腕を備えた把持作用の高い直接・間接支台装置を応用することが有効であることを示唆したものと考えられた。
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