長崎大学医学部・歯学部附属病院歯科材料アレルギー室を受診した患者で口腔内金属修復物が原因と思われる難治性皮膚疾患の改善症例を多数経験しているが、その発症機序は未だ解明されていない。汗から過剰な金属元素が排泄されているという報告があり、歯科用金属によるアレルギーが原因と考えられる難治性皮膚疾患において、金属アレルギーの検査として試行されているパッチテスト、金属修復物成分分析に加え、汗から排泄される金属元素を検出することにより、発症機序の解明、新たな検査方法の確立を目指す目的で、本研究を計画するに至った。 手掌より排泄される汗の採取方法として、超純水1lをビーカーに入れ、ホットスターラーにて42℃で撹拌し、片手を温水に手首まで10分間浸し、採取した。採取した汗は、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP)にて定性分析を行い、金属元素のうち歯科用金属で使用されるMg、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ir、Pt、Au、Hg、Pbが検出されるかどうかを調べた。今回分析に使用したICPには定性分析が2種類あり、まず被験者10名の試料を簡便な高速モードで測定した。Znは、3名から第1または第2ピークが確認され、7名から第3ピークのみ確認された。プロファイルは10名全てから明らかなピークが観察された。Ptが、1名から第1または第2ピークが確認されたが、プロファイルではピークが確認できなかった。同じ試料で定量分析を行った結果、Znは、8名より0.008ppmから0.368ppm、平均0.061ppmが検出された。その他では、Hgが1名より0.022ppm検出されただけで、プロファイルのピークが観察されない場合は、定量分析で検出されない可能性が高いと考えられた。 もう一つの定性分析にプロファイルモードがあり、ピークも確認できることから、被検者9名の汗を条件を厳しく設定し、分析したが、プロファイルのピークが観察できた元素はなかった。
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