研究概要 |
昨年度に続き,ウレタン系オリゴマーを主原料とした耐久性や装着感に優れた軟性裏装材を開発するために,各種軟質ウレタンオリゴマーの基礎的な物性を測定し,軟性裏装材として使用可能と期待される材料を幾つか選択した.各ウレタンアクリレート材料に光増感剤(カンファキノン)と還元剤(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)をそれぞれ0.5wt%添加し光照射後,重合体の残留モノマー量を測定した.未重合モノマーが多量に残留すると,重合体の機械的強度が低下するだけでなく,歯科用材料として口腔内で使用することを想定した場合,口腔内に溶出する可能性もあり生体に対する安全性の観点からも望ましくない.測定の結果,多くの材料は残留モノマーが15%以下で中には2%以下となる有望な材料も見受けられた.反面,半分近く残留物が認められる材料もあり,この材料は重合方法を再検討する必要があると思われた 患者サイドの立場から機能性に優れる軟性裏装材の開発に繋げる目的で,当科で総義歯を作製しアンケート調査に同意を得た患者を被験者として,今年度も継続して臨床研究を実施した.本臨床研究は,鹿児島大学病院臨床研究倫理委員会の承認を得ているものである.市販の各種軟性裏装材を応用して,裏装材のレオロジー的物性の相違および裏装材の厚さの相違が,被験者の口腔内感覚に及ぼす影響に関して検討を行った.その結果,裏装材の硬さや弾性率は小さい方が被験者の義歯の装着感は良好で,疼痛緩和の効果も期待される可能性が示唆された.一方,裏装材の厚さによる影響はほとんど認められなかった.得られた知見は平成22年度第119回日本補綴歯科学会学術大会(東京ビッグサイト)において発表を行った
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