研究概要 |
近年,インプラント治療の予知率が向上し,治療オプションのひとつとして極めて高い成功率を達成している.しかし,ごくまれにインプラント周囲炎からインプラント喪失に至る症例もあり,その原因としてはインプラント周囲の清掃不良のみとは考えにくいようなケース(インプラント埋入直後の骨吸収やディスインテグレーション)も散見される.インプラント周囲炎は治療法が確立されておらず,インプラント周囲の消毒やデブライメントなど,姑息的な治療法に終始しているのが現状である.そこで本実験では少数例に起きるインプラント周囲炎の危険性を口腔粘膜より採取した口腔粘膜上皮細胞の遺伝子多型解析によるリスク診断調査で明らかにし,その後の治療計画やメンテナンス間隔の決定などに役立てることを目的とした.平成21年度は口腔粘膜細胞を用いた遺伝子多型解析の実験手技の確立を目標としてインプラント周囲炎を発症した男女10人程度の被験者から口腔粘膜細胞を採取し,以下の手順で実験を行った. ・ギムザ染色を用いて,採取した細胞の確認 ・phi29 DNApolymeraseによるDNA増幅(Genomiphi V2kit使用) ・増幅後,0.6%アガロースゲルを用いて電気泳動を行い,DNA増幅の確認 ・IL-1遺伝子領域の増幅(PCR法) ・PCR後3%アガロースゲルを用いて電気泳動を行い増幅の確認 今回行った実験では遺伝子多型の検出には至らなかったものの,口腔粘膜細胞からIL-1遺伝子領域の増幅が可能であることが確認できたため,今後は被験者の数を増やすことでインプラント周囲炎と遺伝子多型との関連を明らかにしていく予定である.
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