研究概要 |
インプラント周囲炎と炎症性サイトカイン関連遺伝子多型についての調査は皆無であり,遺伝子多型解析によるインプラント周囲炎のリスク診断調査を行うことは非常に意義があると考えた.しかし,遺伝子診断の研究では,通常遺伝子サンプルを静脈血の採取によって得ているが歯科領域において静脈血の採取は一般的とはいえない.そこで本研究では,口腔内より粘膜上皮細胞を採取,Phi29 DNA polymeraseを用いてDNAを増幅することによって,血液サンプルの採取を行わずとも遺伝子診断を行える手技を確立し遺伝子多型とインプラント周囲炎との関連を明らかにし,最終的には遺伝子多型解析によるインプラント周囲炎のリスク診断システムの開発を目的とした. 1.インプラントが埋入された患者のうち,研究の内容を理解し同意を得た40名,177本のインプラントを良好に経過しているグループ27名159本(Control group),インプラントが喪失したグループ13名18本(Test group)に分け,TNF-αおよびIL-1βの遺伝子多型とインプラントの喪失との関連を検討した. 2.Control groupではTNF-αのCアリルを有する披験者は70.1%,Tアリルを有する披験者は29.9%であった.一方,Test groupではTNF-αのCアリルを有する披験者は50.0%,Tアリルを有する披験者も50.0%であり,インプラントの本数ベースで比較すると,Tアリルの方が有意にインプラントのロスト率が高い値を示した(p<0.05). 以上より,口腔内より粘膜上皮細胞からの遺伝子多型解析は非侵襲的であり,術前のインプラントのリスク分析に有効である可能性が示唆された.
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