【目的】近年増加傾向にある味覚障害の原因は多様であるが、約70%に亜鉛内服療法が有効である。著者らは、耳下腺唾液中37kDa亜鉛結合タンパク質である炭酸脱水酵素(CA)VI型(Gustin)が味覚機能に関与するとの報告に基づき、CAVIに対する抗体を作製し、ELISAにてGustin濃度を検出する方法を確立した。医療の現場において、簡便・迅速に早期の治療方針を決定・処置することが求められるが、血清亜鉛値の測定やELISAは時間を要する。そこで、本研究では味覚障害患者に対してPOCTとして検体に含まれる抗原の有無を10分程度でone stepで簡単に診断することが可能なイムノクロマト法を用いた診断をチェアーサイドにて応用することを目的とし、その第一段階として基礎的反応性評価試験を行った。 【方法】1.イムノクロマト法による測定:耳下腺開口部より酸味刺激下にて味覚障害のない成人の耳下腺唾液を吸引採取し、サンプルと供した。金コロイド溶液は40nm、メンブレンはHi-Flow Plus120、テストライン用抗体はヒトCAVIの合成ペプチドに対して作製した抗体(Rabbit-IgG)、コントロール用抗体はswine anti-rabbit IgG抗体を用いた。ライン発色の定量にはイムノクロマトリーダ(C10066)を用いて測定した。2.至適唾液希釈濃度の検討:抗体感作金コロイド溶液を最終濃度O.D.=1.5となるよう加え、陽性コントロール溶液とし、PBS(-)に唾液サンプルを2、4、8、・・・1000倍希釈したものを100μl加え調整した。コントロールはPBS(-)とし、発色を確認した後、イムノクロマトリーダにて測定した。 【結果と考察】唾液サンプル陽性コントロール(合成ペプチド)とPBS(-)において発色の差異が見られ、唾液希釈倍率は8倍から640倍の間で、濃度依存的に発色反応が認められた。つまり、唾液サンプル中にCAVIが少ない場合は、反応が薄くなり、すなわち味覚障害の可能性があるといえる。従って今回作製したイムノクロマト法を用いることにより味覚障害の診断法として確立される可能性が示唆された。
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