研究概要 |
新たに開発した上下歯列接触癖測定システムを用いて覚醒時に上下歯列接触癖が行われる頻度を顎関節症患者と健常者との間で比較した.被験者は,痛みを有する顎関節症患者9名と健常者8名である.測定は連続10日間行い,毎日午前8時から午後9時までの13時間の間に,20±9分間隔で39回,被験者に対して電子メールを自動送信した.質問事項は被験者がメール受信した時点で上下の歯列が接触していたか?接触していた場合にはその時何をしていたか?とした.後者の質問への回答が食事中,嚥下などの場合は機能的咬合接触とし,読書中,パソコンなどの場合は上下歯列接触癖と判断した.なお,送信後120秒以内に返信されたデータを有効回答とし,それ以上時間を要した場合あるいは返信されなかった場合は返信なしと判断される. 測定期間中に収集された全データを対象に,有効返信回答の割合,有効回答のうち機能的咬合接触,上下歯列接触癖それぞれの頻度を検討した.測定期間中に9名の顎関節症患者および健常者8名に対して,それぞれ総計3,510の電子メールが送信された.それらに対する有効な返信回答の割合は顎関節症患者で67.6%および健常者で70.1%であった.有効返信回答のうち顎関節症患者の上下歯列接触癖の頻度は29.8%(中央値)であり,健常者の6.4%(中央値)より有意に高かった.以上の結果より,顎関節症患者は健常者に比較し覚醒時の上下歯列接触癖が多いことが明らかとなった.
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