研究概要 |
覚醒時に観察される非機能的な咬合接触(上下歯列接触癖,tooth Contacting Habit: TCH)は多くの顎関節症患者に認められ、顎関節症の原因因子として注目を集めている。しかし、その頻度を客観的に評価する測定方法がなく実態は明らかでなかった。そこで、新たにTCH測定システムを開発し、顎関節症患者は健常者に比較し覚醒時の上下歯列接触癖が多いことを明らかにした。この測定システムをTCH是正システムとして再構築し、TCH頻度と顎関節症の臨床症候への影響と有効性について検討した。被験者は,痛みを有する顎関節症初診患者でTCHを自覚する者あるいはTCHが疑われる者5名である。最初に3日間のTCH頻度を測定し、その後、20日間TCH是正システムとして運用し、最後に3日間のTCH頻度を測定した。 TCHの測定および是正は,午前8時から午後8時までの12時間とし、30±9分間隔で24回、被験者に対して電子メールを自動送信した。メール受信時に、TCH測定中は上下の歯列の接触の有無を返信させ、TCH是正中は上下の歯列を離すように指示した。顎関節症患者の上下歯列接触癖の頻度は平均42.2±19.9%と高頻度であり,TCH是正後は14.2±8.7%に減少した。また、初診時の顎運動時の疼痛Visual Analog Scale (VAS)は平均55.6±23.9から12.0±17.9へ減少し、無痛最大開口量は平均22.0±12.9mmから39.0±5.1mmへ増加した。TCH是正システムを使用することによりTCH頻度は減少し、臨床症候が改善する可能性が示された。
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