ポリアミド系樹脂製の義歯についてはこれまで薬事未承認であることから、臨床応用について問題視する意見もあった。しかしながら、平成20年4月厚生労働省の薬事承認を受けたことから、今後義歯への臨床応用は増加するものと思われる。一方、基礎的な研究としては材料の物性について調査されているのみで、義歯設計については十分な検討がなされておらず、通常のクラスプに相当する支台歯を取り囲む維持部の形態についても経験に頼って製作されているのが現状である。そこで、様々な支台歯形態に応じて適切に維持力を発現させるための維持部の設計基準を明らかする必要があり、本研究を行った。 まず、第1、第2大臼歯の欠如を想定したエポキシ樹脂製模型上にポリアミド系(ナイロン系)樹脂製の義歯を製作したが、その際、維持部の被覆範囲に差異を与えた。すなわち支台歯歯面を被覆する範囲を(1)第2小臼歯の近心面まで、(2)第1小臼歯の遠心面まで、(3)第1小臼歯の近心面まで、(4)犬歯の遠心面までの4種類とした。また設定アンダーカット量は0.5mmと0.75mmの2種類とし、合計8種類の設計条件を与えた。なお、製作時の誤差を考慮し、各設計条件につき10個の義歯を製作した。ついで、Tugberkらがクラスプについて行った実験に準じて、荷重量計測装置を用いて義歯を咬合平面に対して垂直のした方向で引張り、支台歯からの離脱に要する力量すなわち維持力を計測した。
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