研究概要 |
ノンクラスプデンチャーが臨床応用されているが、これらについての研究はほとんど行われておらず、クラスプとは異なる維持部の形態の設計基準については明らかにされていない。そこで本研究は、ポリアミド系樹脂製の義歯を用いて、維持部の設計と発揮維持力及び支持力の関係を明らかにし、その有用性について検討することとした。実験は、上顎左側大臼歯欠如のエポキシ模型に対し、ポリアミド樹脂(Valplast 110)を用いた実験用義歯を製作し、支台装置は頬側のみを維持腕とする二腕鉤で、腕の設計を4種類とした。設計は、設計1:第二小臼歯近心、設計2:第一小臼歯遠心、設計3:第一小臼歯近心、設計4:犬歯遠心までの範囲とし、利用するアンダーカット量は0.5mmで、設計1と3については0.75mmも設定した。第一大臼歯部相当部に加圧時と牽引時の維持腕がアンダーカットから離脱する力を計測し検討した。加圧時の結果は、アンダーカット量0.5mmでの支持能力は約0,8~1.2kgfで、設計1と設計4、設計2と設計4、設計3と設計4との間にそれぞれ有意差が認められた。またアンダーカット量0.75mmでの支持能力は1.3~1.6kgfで、設計1と設計3の間に有意差は認められなかった。牽引時の結果は、アンダーカット量0.5mmでの維持能力は約0.14~025kgfで、設計1と設計2、設計3と設計4の間以外に有意差が認められた。またアンダーカット量0.75mmでの維持能力は設計1で約5.10kgf、設計3で約10.9kgfで、設計1と設計3の間に有意差は認められた。本研究により、支台装置の支持能力は大きくなく、維持力も支台装置の設計により維持能力が異なることが明らかになった。 今後は、支台歯の負担および顎堤の負担の兼ね合いのとれた適切な支台装置の設計についての検討も必要と考えられる。
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