研究概要 |
「口腔は認知機能の障害過程に介入できるか-その脳神経病理学的根拠を求めて」という本研究課題における初年度研究実績の概要は以下のように総括される. 歯の部分欠損症例における義歯に使用による1)前頭皮質活性,2)咀嚼筋活動,3)咬合接触様相,4)食品摂取アンケートにいずれにおいても,義歯装着は有意な増加を示し,義歯装着による脳高次機能活性と咀嚼の向上とのかかわりが明らかとなった.とくに歯の部分欠損症例における義歯の使用による前頭皮質活性の向上は,咀嚼の側性にかかわりなく前頭前野背側部に右半側優位性を示した.このことから,咀嚼(食塊認知)にかかわる口腔の体性感覚認知のプロセスに右側前頭前野が深くかかわると考えられた. 歯の部分欠損症例における義歯に使用による効果を健常成人と比較すると,1)咬合接触様相,2)食品摂取アンケートのいずれにおいても,健常者は義歯装着のそれより有意に大きい値を示した.一方,3)前頭皮質活性に関する咀嚼の効果には,健常者と義歯装着者とに有意な差異は示されなかった.これらのことから,義歯装着による前頭前野背側領域の活性効果は健常レベルにまで上昇することが確認された. 上記の検討結果については,その一部を第118回日本補綴歯科学会(平成21年6月6~7日,京都)において発表し,また次年度には第119回日本補綴歯科学会(平成22年6月11~14日,東京)日本補綴歯科学会(平成22年6月11~14日,東京)ならびに第88回国際歯科研究学会議(IADR,2010107114~17,Barcelona)での発表を予定しており,すでに抄録は投稿済みである. また,現在,部分欠損歯列患者における義歯装着前後の前頭皮質活性の変化と認知機能検査ならびにQOLとの関連については検討を継続している.
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