研究概要 |
本研究は,運動生理学の観点から顎運動および咀嚼筋活動量の同時計測を行い,咬頭干渉が及ぼす影響についての関連性を明らかにする,咬合干渉を付与した実験では,咬合接触検査装置により観察する必要がある.そこで,日常生活において強い影響を与えない咬合干渉を長期的に付与し,歯根膜感覚の変化を下顎運動,さらに咬合接触様相や咀嚼筋筋活動とともに観察することで,弱い慢性的な刺激による突発性咬合感覚異常の成因を明らかにする事とした.本研究において,咬合感覚の変化をみるには,末梢性の感覚の評価が必須である.そこで,末梢性の感覚を定量的に評価する目的で,平常時の歯根膜触感覚閾値を計測した.被験者は,正常者10名,全て女性である.対象歯は,上顎左右側の第一小臼歯とした。ナイロン製のvon Frey Hairチップを用いた電子痛覚測定装置にて計測した結果,触感覚閾値は,右側小臼歯部では,平均2.60g(SD1.33g),左側小臼歯部では,2.84g(SD1.25g),全体で2.72g(SD1.30g)であった.22年度は,表面麻酔薬を用いて,閾値感覚の変化を左右側同名歯の差を検討し,閾値の変化の違いをみた.表面麻酔薬を,被験歯の頬側歯肉部に塗布し,開始から1分後,3分後,5分後,10分後,15分後,30分後に計測した.結果,開始から3分後に,左右側とも平常時と差がみられた.また,各時間ごとの比較では,15分後から30分後に左右側で差がみられた正常者において,平常時および表面麻酔薬作用発現時でも,圧感覚閾値に左右差は認められなかったことから,咬合感覚異常を検出するための基準となる可能性が示唆された.しかし,個々の患者においては,その咬合接触および歯の形態は様々で,歯に対する咬合力のかかり方が異なる。力の方向の違いによる歯の接触感覚の違いは大きく,同一に評価することが難しいことから,患者個々の咬合接触を詳細に評価する必要があると思われた.そこで本年度は,咬合接触を定量的に計測できる咬合接触の解析を試みた.
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