本研究の目的は、良好な操作性と十分な強度を有するガラス繊維強化型コンポジットレジン(FRC:fiber reinforced composites)を開発し、FRCを応用した義歯が十分な強度を有するような義歯内でのFRCの適正な配置を検討することである。 平成21年度は、義歯の補強に使用するFRC補強材の開発を行った。各種材料で2×2×25mmの試料を作製し、3点曲げ試験を行った。その結果、シラン処理されたE-ガラス繊維(直径20μm)と、カンファーキノンおよび2-ジメチルアミノエチルメタクリレートの混合物を含有したウレタンジメタクリレート-トリエチレングリコールジメタクリレートから成るマトリックスを用いて、マトリックスにガラス繊維を最密に含浸、包埋したときに、高い強度を示し、レジン床義歯の補強材に最適なFRCを作製することができた。 さらに、義歯内でのFRCの適正な配置を検討する前の予備実験として、補強材が無い状態での、各種床用レジンで作製した総義歯の強度を検討した。上顎無歯顎模型に人工歯排列、歯肉形成を行い、5種の義歯床用レジン(加熱重合型義歯床用レジン、耐衝撃性加熱重合型床用レジン、流し込み型義歯床用レジン、マイクロ波重合型義歯床用レジン、光重合型義歯床用レジン)で重合を行った。完成した義歯は、25mmのスチールボールで曲げ荷重を加え、破折時の荷重を評価した。その結果、義歯床用レジンの種類により特徴的な強度を示すことが明らかになった。また、比較対照実験として、従来型の補強材すなわちメタル補強材を上顎レジン床総義歯に埋入したときの義歯の強度について検討を行った。この対照実験は引き続き22年度も行う予定である。
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