研究概要 |
本研究では、現在の歯科インプラント治療において、オッセオインテグレーションを獲得しない場合のインプラント初期治癒過程について、in vivo及びin vitroで評価し、オッセオインテグレーションを阻害する原因について解明することを目的としている。 前年度に設定した実験モデルの条件に従った3つのグループ(A. オッセオインテグレーション獲得モデルB. オッセオインテグレーション非獲得モデルならびにC. コントロール)についてのマイクロアレイ解析より,インプラント周囲に見られる4万個あまりの遺伝子の中で,両群それぞれについてコントロール群に対し高い発現率を示した遺伝子について多重比較補正(Benjamini HochbergFDR)を行ったところ,A群特有に発現している遺伝子は638個,B群特有に発現している遺伝子は381個,両群共通に発現している遺伝子は155個確認された. A群特有に発現している遺伝子のうちコントロール群と顕著な発現差異を示したものには,Spp1,Thbs2,Dmp1,Dkk1などの骨形成に関与する遺伝子が含まれていた.これらについてReal time PCRによる相対定量を行ったところ,マイクロアレイと同様の傾向が確認された.一方,B群特有に発現している遺伝子のうちコントロール群と顕著な発現差異を示したものに,Clqtnf3,Gabre,Myh1などが認められたが,その変動量は個体差が大きく一様ではないことが考えられた. この結果から,オッセオインテグレーションが獲得される場合には骨形成に関与する遺伝子が発現するが,オッセオインテグレーションを獲得できない場合には,多様な遺伝子が複雑に発現していることが示唆された.
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