研究概要 |
本研究の目的は, 1)顎骨再生に必要な強度と生分解性をもつキトサン・HAPナノ複合体の作製および最適化を行い, 2)生理活性因子や薬剤(抗がん剤等)の固定および徐放化技術を開発し, 3)DDS担体の生物学的効能や安全性を実証し, 顎骨に浸潤する口腔がんを制御する新しい細胞応答型DDS担体を開発することである.今年度は下記の結果が得られた. 1. キトサン・HAPナノ複合体の作製・最適化 顎骨再生の際には,生体適合材料の強度を保ちながらの分解速度の制御が重要な課題となる.そこで,生分解性のコントロールを,脱アセチル化度制御やナノ繊維化加工,複合素材形成などの技術を利用して確立し,顎骨再生に適した物性を得た. 2. 生理活性因子や薬剤(抗がん剤等)の固定および徐放化(DDS)技術の開発 キトサン・HAPナノ複合体の移植材料としての適用性を検討した.この素材の微結晶表面積は膨大であるため,生理活性因子や薬剤の徐放材料としで期待できる.BMP-2を含浸させ,ラット頭部に移植すると骨形成がみられた.これはキトサン・HAPナノ複合体が生理活性因子の徐放担体としての有効であることを示唆している. 3. 顎骨浸潤する口腔がんを制御する細胞応答型DDS担体の設計 口腔扁平上皮がんの悪性度と脱リン酸化酵素PRL-3の発現レベルとの間に相関関係があることを見出した.また,大腸がんおよび肝細胞がんのHOX遺伝子の発現パターンを解析し,HOXD8が大腸がんの肝転移に対して抑制的に働く可能性があることを見出した.HOX遺伝子を指標とした細胞応答型DDS担体の設計が妥当と考えられた.
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