ヒト歯槽骨由来の骨膜小片を培養して、そこから遊走してくる細胞が形成する細胞が重層化したシート状のものを培養骨膜シートと称している。本研究では、この骨膜シートの骨形成活性を最大に引き出すことができるプロセッシング法として増殖因子とPRPの組み合わせ処理法の有効性を検討した。また、基材として、poly(lactide-8-caprolactone)(LCL)フィルムと多孔質poly-L-lactic acid(PLA)膜の有用性を検討した。比較として、分散骨膜細胞を多孔質セラミックスブロックに播種して作製した「培養骨」を用いた。 1. 増殖因子とPRPによる骨膜培養期間の短縮化と高機能化の両立:培養開始時点からPRPやbFGFやdexamethasoneなどで順次骨膜片を処理することによって、増殖速度を格段に向上させるとともにALPなど骨芽細胞マーカーの発現を促進させ、結果的に石灰化を誘導できた。 2. 新規基材の開発:collagen-coated ePTFE meshを用いた実験からcollagenコートが有用なことは確認できたが、PAUを用いた化学的処理法がうまくいかず、自然吸着を利用してLCLの表面処理を行った。均一にコートすることは困難であったが、培養期間を通じておおきく剥離することもなく、骨膜シートの維持と増殖に貢献した。動物への移植実験においては、形成された石灰化組織を溶解させることもなく、炎症反応もわずかなもので、臨床応用の可能性を示唆した。一方、直径30-50μmの気孔からなる多孔質PLA膜は、collagenなどの前処理がなくとも、高い骨膜片の維持保持能力を発揮することから、そのトポグラフィ的な特徴が関与しているものと想像し、現在、解析作業を進めているところである。 3. 非侵襲的骨形成評価法の開発:特に動物を用いて骨形成実験を行ううえで、評価法の確立は重要である。μCTによる形成類骨量の測定はすでに確立していたが、生きた状態の動物を観察することは困難であった。そこで、^<99m>Tc-HMDPを用いた骨シンチレーション法の応用と近赤外(NIR)蛍光色素で標識したpamidoronateをプローブとしたoptical imagingについて検討した。一長一短あるものの、どちらも異所性類骨形成を鋭敏に検出することができた。しかし、リン酸カルシウムへの吸着が想定以上に強力であることも判明したことから、再生医学研究のためには、プローブの新規開発も含めて、研究戦略の練り直しの必要性を感じている。
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