研究課題
本年度は、おもに次の3項目について検討した。1)高分子成分が骨膜接着に及ぼす影響:昨年度に引き続き、合成高分子製多孔質膜の足場としての可能性について、おもにウシ骨膜を使用して検討を継続した。純粋なPLLA膜とPLLA:PCLを50:50にブレンドした膜と純粋なPCL膜を作製し、骨膜シートの培養を試みた。PCL膜の場合、素材が柔らかすぎるためか、作製過程で表面の気孔が閉鎖してしまうため微細な凹凸構造を形成できず、骨膜片を接着するという点で難があった。また、接着できた場合も、遊走細胞が内部の気孔に侵入することはできなかった。一方、ブレンド膜は表面微細構造を損なうことなく、ある程度素材の柔らかさを維持できたため、骨膜接着に有効であった。細胞の深部気孔への浸透は、PLLA膜よりも優れていた。2)高分子成分が初期細胞接着に及ぼす影響:分散骨膜細胞を比較的滑沢なPLLA膜とPCL膜上に播種して、初期接着について比較すると、圧倒的にPCL膜への接着がよいことが判明した。したがって、(1)の所見は、ある程度の体積を有する骨膜片を安定化させるには、素材の柔軟性だけでは制御できず、表面テクスチャーに特徴を持たせるか、コラーゲンなどの細胞外基質による表面修飾が必要であることを示唆しているものと解釈できる。3)骨形成活性を犠牲にしない骨膜シートの保存法の開発:臨床において、培養日数のかかる骨膜シートにとって治療スケジュールの柔軟化は重大な課題である。培養骨膜シートの活性を損なわずに凍結保存するために、基材との一体化で保存する方法を模索したが、結果的に骨膜シートの骨膜片部分だけを10%DMSO含有FBSで保存することが有効であることを発見した。また、緑茶カテキンの一種であるEGCGを使用すると、冷蔵庫内で培養ディッシュや基材上で培養した骨膜シートを1週間程度保存することができた。この冷蔵保存技術は、将来的に病院間連携における検体搬送においても有効な手段となりうると考えている。
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