本年度はオン・デマンド型3Dカセット移植材の構築に必要とされる各構成要素の開発を行うとともに、これらの構成要素が組織再生に与える効果の検討を開始した。(1)理想的な最終治癒形態に則した形状を三次元的に付与した骨再生用足場材の作成を行なった。当初はこの足場材の基材としてβ-TCPの使用を予定していたが、次年度以降に実施予定のシグナル分子による組織再生制御研究において優位性を持つと考えられる多孔性HAp/ZrO_2 compositeに基材を変更して足場材を作成した。(2)治癒に適した任意の形状で各種細胞を培養するための細胞培養用ディッシュを作成した。これを用いてフィブリンゲルを培養基材として1x10^6cell/wellのマウス由来間葉系幹細胞株を2日間三次元培養することで、均一な細胞配置を持つ厚さ約60μmの間葉系幹細胞シートを作成した。(3)マウス頭蓋骨に人工的骨欠損を作成し、上記の骨再生用足場材ならびに間葉系幹細胞シートを積層して移植した。そして現在、in vivoにおけるマルチレイヤー移植材の治癒に対する効果を、組織学的に解析中である。次年度は本年度の研究で確立された手法を用いて歯周組織を構成する各種細胞の三次元培養を行い、得られた細胞シートを積層して培養することで、異種細胞の重層培養が互いの細胞増殖・細胞外基質産生に及ぼす影響をin vitroで検討する。また、作成したマルチレイヤー移植材にシグナル分子を投与することで、移植材の生物活性を最適な状態に制御することを目的とした研究を行なう予定である。
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