組織再生に用いる移植材の生物活性を、シグナル分子を用いて最適な状態に制御するための条件の検討を目的として、以下の実験を行った。すなわち、硬組織形成能を有するマウス歯根膜由来クローン(MPDL22)を10%FCS添加α-MEM培地にて培養し、種々の濃度のVEGFもしくはFGF-2を用いて単独で、もしくは両者を混合して刺激を行った際の増殖能の変化を、細胞増殖試薬(WST-1)を用いて比較検討した。また、石灰化誘導培地にて培養したMPDL22をVEGFで刺激した際の、骨形成に関与する各種mRNA発現の変化を検討した。さらにマウス血管内皮細胞の三次元培養を用い、種々の濃度のVEGFもしくはFGF-2を用いて単独で、もしくは混合して添加した際の、血管管腔形成に及ぼす影響を検討した。その結果、VEGFが低濃度のFGF-2と協調的に働いて細胞増殖に関与する一方で、高濃度のFGF-2が存在する条件ではその働きを抑制することが明らかとなった。また血管内皮細胞の血管管腔形成に際して、低濃度のVEGFが存在する条件下ではFGF-2の添加によって血管管腔形成が促進される一方で、高濃度のVEGFが存在する条件下では、FGF-2添加によって管腔形成が抑制される傾向があることが明らかとなった。さらにVEGFが細胞の石灰化に著明な影響を及ぼさないことが示された。 これらの結果を基に、次年度はオン・デマンド型3Dカセット移植材の開発を目指し、骨再生足場材に細胞シートを積層したマルチレイヤー移植材を作製して動物モデルに作成した人工的骨欠損に移植するとともに、シグナル分子を用いた組織再生の再生プロセス制御を試みる予定である。
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