研究概要 |
1.歯周組織の再生制御において、シグナル分子としてFGF-2を用いる際の最適条件を検討するために、FGF-2が歯根膜由来細胞(MPDL22)の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生と、その受容体発現に与える影響を検討した。その結果、FGF-2濃度依存的にVEGFのmRNA発現と、そのタンパクレベルでの産生の増加が認められることが明らかとなった。またVEGF受容体に関しては、FGF-2濃度依存的にVEGFR-1のmRNAの発現が誘導されることが明らかとなった。 2.高度組織欠損モデルにおけるシグナル分子と人工的足場材の併用効果を検討するために、ビーグル犬に作成した高度組織欠損に対して、β-TCPに各種の濃度のFGF-2溶液を含浸した移植材を作成して移植し、組織再生効果を検討した。その結果、両者の併用によって、各々を単独で用いた場合よりも良好な組織再生が得られることが明らかとなった。 3.FGF-2をシグナル分子として用いた組織再生制御の効果を検討するために、ビーグル犬に作成した組織欠損に対する二回法インプラント植立モデルを用い、フィクスチャの周囲に組織の充足率・充足速度を計測するためのチャンバーを付与したカスタムインプラントを作成して、シグナル分子による組織再生制御がインプラント周囲の組織再生に与える影響を組織学的に検討した。その結果、FGF-2投与群では術後早期から新生骨梁面積と骨結合面長がともに有意に増加することが明らかとなった。またFGF-2投与群では、既存骨から離れた場所においても、獲得しうる骨結合面長が有意に高くなることが明らかとなった。この結果から,インプラント埋入時にFGF-2を投与することで早期の新生骨形成が促進され,初期固定が不良となるような高度骨欠損症例においても、良好な骨性結合が得られる可能性が示された。
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