研究概要 |
歯科用マトリックスレジンの開発に際して,内分泌撹乱作用の問題を解決して,且つ,力学的に好ましい環状構造を構築する為に,塩基性基を有する脂肪族モノマーであるウレタンジメタクリレート(UDMA)と酸性基を有する脂肪族モノマーであるメタクリル酸(MAA)で構成される共重合系を構築することによって,重合時に共有結合と水素結合とで構成される環状構造と成し,強度・弾性・靭性に優れたマトリックスレジンを創製し(特開2002-87921),その粘弾性特性を明らかにした.マトリックスレジンは複合化に際して,低粘度であることが求められ,更に,複合材料の成形性に影響を与えるチキソトロピー性に代表される動的な粘弾性特性を持つことが求められる.粘弾性特性を検討した結果,最も優れた力学的特性を発現するUDMA/MAA(=1/2モル比)系の粘度0.25[Pa.s]は,典型的なマトリックスレジンBis-GMA/3G(=1/1モル比)系の粘度0.91[Pa.s]の1/3以下であり,複合化に関して従来のマトリックスレジンよりも好ましい特性を持っていることを明らかにした.また,ナノフィラーを用いる複合化において,Bis-GMA/3G系複合材料ではニュートニアン流体であったのに対して,UDMA/MAA系では剪断応力が高くなると粘度が急激に低下するチキソトロピー性を発現することが解った.この特性は,無応力時は形態を保持し,応力を加えた際には容易に変形することを意味し,歯科用コンポジットレジンのような成形修復材料への応用に向けて好ましい特性である.また,昨年度に明らかにした架橋性脂肪族ビニルモノマーとPMMAレジンから構成される混和物重合体の優れた力学的特性が,分子レベルよりも大きな組織構造である海島構造に基づくことを明らかにした.(PCT/JP2011/050880)
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