研究概要 |
剛直さと"粘り強さ"と言う一般には相反する機械的特性を併せ持つ歯科用マトリックスレジン,特に,義歯床用のポリマー素材の創製を目指して,優れた機械的強度を有することが知られているポリメタクリル酸メチル(PMMA)粉剤とPMMA粉剤を膨潤溶解して可塑性を有する粘弾性体を提供することを明らかにしている液状多官能性脂肪族ビニルエステルモノマー(MFVE)液剤とから調製される粉液混和型ポリマーアロイを創造した.(特許第4517148号)PMMA/MFVE系ポリマーアロイはPMMAよりも優れた機械的強度を発現するばかりでなく,強度とは相反する特性である粘り強さも向上していた.その要因は,PMMA粒子とPMMA粒子表層に形成される線状ポリマーであるPMMAと網目状構造を有するpolyMFVEとから構成されるセミ相互侵入網目構造(セミ-IPN)と言う力学的特性が異なるポリマーが分散混在する海島構造に由来すると推察された,更に,MFVEの重合基間距離が近いメタクリル酸ビニル(VMA)及びアクリル酸ビニル(VA)とPMMA粉剤とから構成されるポリマーアロイは,polyVMA及びpolyVAの極高架橋密度構造に由来する緻密な網目構造故にPMMA粒子表層に形成されるセミ-IPNは吸水膨張をも抑制する程に剛直となり,飽和吸水率をも抑制させることが出来ることを明らかにした.(特願2012-61041)即ち,ポリマーを構成するモノマー単位の分子構造に由来するのではなく,ポリマーの高次構造に基づく吸水特性の性状が可能であることを意味し,親水性であるのに吸水率が少ないなど従来の概念にないポリマー成形品を可能となった.
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