本年度は界面活性剤、オゾン、親水性高分子を用いたそれぞれ三つ手法を用いて、プリウレタン(PU)基板の親水化を試み、懸濁液中に分散された無機粒子(α-TCP)との相互作用を高めることが可能かどうか基礎的な調査を行った。最終作製物である炭酸アパタイトは骨置換材として生体に応用されることを念頭に、添加される化学物質は系から容易に除去可能であることや元々生体に対して悪影響を及ぼさないものを選んで使用した。まず、エタノールをはじめとするアルコール類を粒子懸濁液に添加して、アルコールの種類や量(濃度)が粒子とPU基板との相互作用に与える影響を調べたところ、アルコールの添加はPU界面に付着するα-TCP粒子に対して有効に働くものの、懸濁液中の粒子同士の分散性が高まることで粒子間相互作用が弱まり、全体的にPU表面への粒子付着量を増加させるには至らなかった。次に、オゾン処理を施したPU基板を用いたところ、未処理群に比べて粒子付着量が増加する傾向が観察されたが、乾燥後の付着粒子は脱着しやすかった。一方、水溶性高分子であり、かつ生体親和性も高いポリビニルアルコール(PVA)を粒子懸濁液に添加したところ、これまでの二つの手法に比べて、明らかに多くのα-TCP粒子が付着し、乾燥後も付着粒子がPU基板上に保持できた。添加する濃度について検討したところ、濃度が高くなるにつれ粒子の付着量が増すが、高濃度になると溶液の粘性が高まるとともに均一溶液が得られなくなるため、PVAの濃度は5%程度が適切であると結論した。
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