研究概要 |
昨年度明らかになった親水化条件(5%PVA)を適用してポリウレタン(PU)フォームの前処理を行った。さらに,前処理されたPUフォームをテンプレートとして得られた炭酸アパタイト(CAp)フォームの材料学的な検討を行った。X線回折法,FT-IR,TG-DTAおよびCHN分析を用いて得られた試料の構造学的なキャラクタリゼーションを行ったところ,前処理の有無によらずCApの単一層が得られることを確認し,炭酸含有量にも変化がなく約6-8%存在することが分かった。EDXとICPを用いて得られた試料の化学分析を行ったところ前処理の有無による違いは認められなかった。得られたCApフォームの圧縮強度を測定したところ,未処理に比べて約2倍以上向上することが明らかになった。SEMおよびBET法による評価により,前処理したポリウレタンを用いても得られたCApフォーム骨格中にクラックや微細気孔が観察されたため,このクラックや気孔にCApを析出・充填させ,生体親和性を変えることなく強度を向上させる新たな試みを行った。この検討では処理の有効性を明らかにするために,データーの信頼性を考慮して力学的評価のしやすいディスク状試料を用いた。CApディスクをカルシウム塩水溶液に浸漬しクラックや気孔の中にカルシウム塩を析出させた後,炭酸化とリン酸化を行った。得られた試料のキャラクタリゼーションによって,クラックや気孔がCApの微細粒子で充填されており,析出したCAp結晶が母体のCAp結晶と絡み合う様子が観察された。間接引っ張り強さを測定したところ,処理後の試料は処理前に比べて1.5倍に向上した。よって,本研究で着想したカルシウム塩水溶液処理はCApフォームに適用可能でCApフォームの強度向上に有効だと結論付けた。PUフォームの前処理に加えカルシウム塩水溶液処理はCApフォームの強度向上に有効だと期待される。
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