初年度となる平成21年度は以下の成果を得た。 1. 固体表面へのヒアルロン酸の吸着の解析 水晶発振子マイクロバランス(QCM)を用いて、種々の固体表面へのヒアルロン酸(HyA)の吸着特性を調べた。その結果、HyAは金、酸化チタン、アパタイトなどの表面には吸着しにくいことがわかった。一方、それぞれの基板にコラーゲンの様な別物質を吸着させて(=一次吸着)、その表面にHyAを作用させると吸着の起こることが見出された(=二次吸着)。吸着に伴うエネルギー消散の増加の程度から、同じ線状分子構造であっても、HyAの吸着層はコラーゲンの様なタンパク質に比べ比較的「硬い」ことが示唆された。多糖であるHyAは分子構造の特徴としてタンパク質に比べ持続長が長いことから、吸着層が相対的に硬いと解釈されるQCMの結果は合理的である。正に帯電した表面に対してHyAは直接吸着(=一次吸着)すると予想されるので、次年度にこれを酸化物系固体表面について示す予定である。 2. 陽イオン性界面活性剤によるヒアルロン酸ゲルの硬化 抗菌性を有する2種類の陽イオン性界面活性剤、塩化セチルピリジニウム(CPC)と塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)を、それぞれの臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度で0.01%HyA水溶液に添加すると、HyAは著しく凝集した。CPC、CTAC(正に帯電)とHyA(負に帯電)が静電的に結合した結果、逆ミセル状の会合体が形成され、水中で疎水的に凝集したと考えられた。すなわち、CPCやCTACはバイオフィルムを収縮させ、細菌の情報伝達物質(オートインデューサー)の拡散を阻害する可能性が示唆された。
|