2006年に京都大学、山中教授らによって初めて発表されたiPS細胞(induced pluripotent stem cells)は、これまでの研究・において外胚葉、中胚葉、内胚葉すべての細胞に分化可能であることが確認されており、ES細胞同様に歯を構成する細胞に分化させることは十分可能であると考えられる。そこで、iPS細胞から歯を構成する細胞を分化誘導し、それを用いてbiotoothを作製することは、歯の再生治療における一つの重要な技術開発と考え、今回この研究計画を立案した。本計画はiPS細胞から上皮・間葉の各細胞への分化誘導を検討し、それらの細胞とマウス歯胚由来細胞とを組み合わせることにより歯胚の組織細胞をiPS由来細胞から作り出すことを目標とする。 今年度得られた研究成果 1. iPS細胞から間葉細胞を効率よく分化誘導する技術の開発 ES細胞による研究を参考にし、iPS細胞から間葉系幹細胞(Msc)を効率よく分化誘導する方法を確立した。 この細胞では90%以上の細胞がMSCマーカーであるSTRO-1陽性であり、その他の間葉マーカーも陽性であった。 現在この細胞がin vitroにおいて多分可能を有しているか検討している。 2. iPS細胞から分化させた細胞を分離する技術の確立 「1」で分化誘導したMSCをMacs cell sorting systemを用いSTRO-1陽性細胞で選択的に分離する技術の構築に成功した。 3. iPS細胞と歯胚細胞との組み合わせによる移植実験 未分化iPS細胞と歯胚細胞をコラーゲンスポンジ中で組み合わせ、免疫不全マウス腎皮膜下に移植したところ、一部で歯胚様の構造物を作ることがわかった。しかしながら、この実験において歯胚構造が見られる確立は非常に低く、現在は、「1」でMSCに分化させたiPS細胞をマウスの歯胚と組み合わせ、移植実験を行い、より確立の高い歯胚作製技術の構築を検討している。
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