本計画はiPS細胞(induced pluripotent stem cells)から上皮・間葉の各細胞への分化誘導を検討し、それらの細胞とマウス歯胚由来細胞とを組み合わせることにより歯胚の組織細胞をiPS由来細胞から作り出すことを目標としている。 今年度得られた研究成果 1.iPS細胞から神経堤細胞への分化誘導法の確立 マウスiPS細胞から歯原性間葉細胞の前駆細胞である神経堤細胞へ分化させる誘導法を確立した。昨年度開発した分化誘導法を改良することで、さらに神経堤細胞マーカー陽性細胞の出現率を挙げることに成功した。 2.iPS細胞由来神経堤様細胞の象牙芽細胞への分化能 1で誘導された神経堤様細胞をマウス歯胚上皮細胞と共培養することにより、この細胞が象牙芽細胞マーカーDSPを発現することが分かった。また、この遺伝子発現は、マウス歯胚上皮細胞株HAT-7のコンディションドメディウムでの培養において増加することがわかった。さらに、誘導した細胞から磁気ビーズ法にてHNK-1陽性細胞と陰性細胞を分離し、マウス歯胚上皮との共培養後のDSPの発現を比較したところ、陽性細胞がよりDSPを発現することが明らかとなり、HNK-1陽性神経堤細胞がより強い象牙芽細胞分化能をもつことが示唆された。以上の結果は2011年に論文としてStem cells & Development誌に掲載された。 3.iPS細胞由来神経堤様細胞と歯胚細胞との組み合わせによる移植実験 iPS細胞由来神経堤様細胞と歯胚上皮細胞を組み合わせ、免疫不全マウス腎皮膜下に移植する実験をフランスの研究チームとの共同研究にて進めている。現在までに、移植後1週後の組織で、初期歯胚用の構造物が出来ることが確認されている。今後この実験をすすめ、iPS細胞由来神経堤様細胞が歯を再生させるかどうかを検討していく。
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