研究課題
基盤研究(C)
iPS細胞(induced pluripotent stem cells)は、これまでの研究において外胚葉、中胚葉、内胚葉すべての細胞に分化可能であることが確認されており、ES細胞同様に歯を構成する細胞に分化させることは十分可能であると考えられる。そこでiPS細胞から歯を構成する細胞を分化誘導し、それを用いてbiotoothを作製することは、歯の再生治療における一つの重要な技術開発と考え今回この研究計画を立案した。本計画はiPS細胞から上皮・間葉の各細胞への分化誘導を検討し、それらの細胞とマウス歯胚由来細胞とを組み合わせることにより歯胚の組織細胞をiPS由来細胞から作り出すことを目的とした。まず、ES細胞による研究を参考に、iPS細胞から間葉系幹細胞(MSC)を効率よく分化誘導する方法を確立した。この細胞では90%以上の細胞がMSCマーカーであるSTRO-1陽性であり、その他の間葉マーカーも陽性であった。さらに、マウスiPS細胞から歯原性間葉細胞の前駆細胞である神経堤細胞へ分化させる誘導法を開発した。この細胞は、免疫染色、リアルタイムReal Time RT-PCR,フローサイトメーターにてほとんどの細胞が神経堤細胞マーカー陽性であることが示された。また、ヌードマウスに対する移植実験にて腫瘍形成能が認められなかったことより、臨床応用への安全性が示唆された。誘導された神経堤様細胞をマウス歯胚上皮細胞と共培養することにより、この細胞が象牙芽細胞マーカーDSPを発現することが分かった。また、この遺伝子発現は、マウス歯胚上皮細胞株HAT-7のコンディションドメディウムでの培養において有意に増加することがわかった。この結果より、iPS細胞由来神経堤様細胞が象牙芽細胞に分化する能力をもち、歯の再生に有用な細胞ソースとなる得ることが示された。
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