研究概要 |
再生医療の分野では,骨髄中の間葉系幹細胞が脂肪,骨,軟骨などさまざまな問質細胞への分化能を持つとされていることから,本人由来幹細胞ソースとして注目を浴びている。申請者らのグループはこれまでに、マウス骨髄由来間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells;MSCs)に対して特異的な抗原の組み合わせを300種類もの細胞表面抗原をスクリーニングし、見つけ出すことに成功した。ヒトMSCsに対してもMSCs特異的な抗原の組み合わせを見つけ出すことに成功し,組織再生能力の高い細胞を選択的に増やすことができるようになった。申請者が専門とする歯周病領域においては失われた歯周組織の再構築のために現在までに組織再生誘導療法としてエムドゲイン療法といった歯周組織再生に対するアプローチが主流となっているが、ゲルのため骨欠損内に停滞させることが困難であるといった臨床上解決されるべき課題点も多い。そこで、われわれは簡便にかつ歯周組織の再生スペースを確保できる新しい担体の開発が必要であると考え、足場の開発を試み,操作性が良く,再生の場を保つための賦形が容易に行え,組織吸収性である可視光硬化型ゼラチンを開発した。そこでこれら二つの研究成果を踏まえ、平成23年度は歯周病にて欠損した歯槽骨・歯根膜・セメント質組織を再生させる新たな再生療法の確立を目指し、高純度マウス及びヒトMSCsからの各歯周組織構成細胞の分化誘導実験を試みた。高純度MSCsは現在報告されている従来法によって分離されるMSCsに比較して骨・軟骨・脂肪への分化能は格段に高いことがわかった。しかしながら、歯周組織構成細胞である歯根膜細胞やセメント質への分化誘導が困難であることから、新たな分化誘導方法を探索する必要がある。
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