研究概要 |
本研究は,可溶化カーボンナノチューブに近赤外照射を行うと光熱変換反応によってカーボンナノチューブが「分子ヒーター」となって発熱することを利用して,「スキャホールドやハイドロゲルドレッシング材に可溶化カーボンナノチューブを添加すれば,温熱効果によって再生部位周辺組織の血流を改善・促進し,再生部位への血管新生の亢進や細胞活性向上をはかれるのではないか」という点を基本戦略としている.これまでの研究成果からアルギン酸を基材とするカーボンナノチューブ配合ハイドロゲルは任意形態への成形性に優れ,かつ温熱デバイスとしての有用性に優れることが明らかとなった.今年度はその温熱特性をより詳細に検討し,制御条件を確立した.その結果,温熱発揮は近赤外線の照射条件によって発現温度と昇温パターンの制御が可能であり,温熱付加のプログラム化が可能であった.また直接近赤外線を照射する場合に比べて昇温速度が迅速であることも大きな特徴である.これらの成果を基にin vivoにおける評価を行った.硬組織再生促進に用いることを目的としてラット頭蓋骨の骨欠損モデルに応用したケースでは,頭蓋部表皮に貼付したゲル型温熱デバイスに近赤外線を照射して発現させることにより,頭皮を通じて欠損部に所期の温熱を付加できることが明らかとなった.また体内でゲル化する基材からなる注入型ゲルを用いると,皮下に注入後に体外から照射された近赤外線によってゲル化した部分のみが温熱発現することが示された.これらの温熱発現は照射条件によってさまざまな付加パターンをとることが可能であり,実際の温熱付加に際してプログラム化することができる.以上の結果から,本研究で創製した温熱デバイスは任意温度に設定したプログラム付加が可能であり,対象部位のみを温熱付加できる有用なデバイスとなることが示唆された.
|