研究概要 |
本研究の目的は、性質の異なる2種類のPositron emission tomography(PET)と骨代謝マーカーをビスホスホネート関連顎骨壊死(BRONJ)の診断プロトコールに組み込み、病変の正確な進展範囲と病態の把握、高気圧酸素療法Hyperbaric oxygen(HBO)の効果判定、HBO後の治療方法の決定、手術する場合には切除範囲の選択、を策定し、症例ごとに適切な治療戦略を確立して患者さんのQOL向上に貢献することである。 当該年度ではBRONJ症例のうち、病変が広範なStageII~IIIで、入院下に検査・治療が可能であった5症例を対象とした。HBOは術前20回、術後10回を行い、各種画像検査結果と臨床症状を対比させてHBOの効果判定を行った。結果はHBO前におけるFDG-PETのSUVmaxの平均は4.7(27~5.6)で、HBO後に1例だけが増加(2.7→4.1)、残りの4例は減少(5.6→1.8,4.5→2.5,5.3→3.5,5.6→2.7)した。増加した症例はTcシンチでHBOの前後で明らかな変化はなかったが、臨床経過はHBO後に排膿を認め炎症が再燃した症例であった。他の4例ではHBO後は臨床的にも症状が改善し、うち3例に外科的消炎術後が行われたが、経過は良好で完全治癒した。また、MRIはいずれの症例もHBO前後で明らかな変化を認めなかった。以上の結果より、今のところ症例数は少ないが、FDG-PETがHBOの効果判定や、BRONJ症例の予後予測に有効である可能性が示唆され、次年度もさらに症例を重ねる予定である。また3例に低酸素状態を反映するFMISO-PETを施行したが、いずれもFDG-PETに比べ集積は非常に弱かった。症例数が少ないのでいまだ結論は下せないが、FMISO-PETはBRONJの病態の評価には適していない可能性が示唆された。
|