顎顔面骨欠損への治療法として成長因子BMP-2と骨髄細胞を用い、骨欠損部周辺の未分化間葉系細胞を増殖・分化させることで骨採取を行う事なく骨の修復を可能とする新規再生医療の実用化を目的として研究を行った。本年度は、1)ラット頭蓋骨に人工的に作成した骨欠損における自家骨髄細胞移植による骨形成。2)ヒト顎骨においてBMP-2を使用して修復された新生骨の組織学的、三次元微細構造X線学的評価を行い、BMP-2、骨髄細胞を用いた再生療法の有効性をそれぞれ検証した。ラット頭蓋骨においては、頸骨から採取した自家骨髄からは移植後7日目から細胞増殖が観察され、これらは移植後14日目からオステオポンチン(=OPN)陽性骨芽細胞様細胞への分化が観察された。また骨髄細胞は移植後21日目から活発な骨形成を示し、移植後35日目には、これらの新生骨が連続し、新生骨梁を形成していく様子がマイクロCTを用いた三次元微細構造学的観察から確認された。このことから、移植骨髄は骨欠損部において高い骨形成能を持つ事が証明された。またこの中で血管形成能を評価するためにCD34陽性細胞発現の観察を行ったところ、BMPを投与しない群に比較して、投与群では、有意にCD34陽性細胞の増殖が観察された。これらの細胞の増殖・分化の様相がBMPを用いて骨修復を行ったヒト再生骨でも観察されるか否かの検証を重ねて行った。ヒト歯槽骨から採取した直径4mmの骨を三次元微細構造学的に観察し、正常骨に近い骨梁構造を確認した。また組織学的にはBMP新生骨周囲に活発な血管新生が観察され、新生骨形成への血管新生の関与が示唆された。
|