研究課題/領域番号 |
21592526
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
東川 晃一郎 広島大学, 病院, 講師 (80363084)
|
研究分担者 |
鎌田 伸之 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70242211)
飛梅 圭 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (40350037)
重石 英生 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (90397943)
|
キーワード | 口腔癌 / 上皮・間葉移行 / 癌の浸潤・転移 / p63 / 上皮整合性 |
研究概要 |
EMT型癌細胞は細胞間接着が解除され、直接的な細胞間シグナルが断裂する。細胞間シグナルが断裂すると細胞にストレスがかかりアポトーシスが誘導される。Snailが発現を抑制するp63およびp63が発現制御するNotchによるアポトーシス機構を、Cyr61/インテグリン/pAKT/FOXO3/Bim経路が抵抗することを見出した。Cyr61はインテグリンを介して細胞運動能を制御するだけでなく、PI3K/Akt経路の活性を直接制御して、p63/Notchシグナル断裂によるアポトーシスを抑制することを解明した。 上皮内癌とは、上皮内に細胞異型を持つ細胞がいる状態で、まだ浸潤能をもたない癌細胞の集団ともいえる。癌細胞集団は上皮構造をある程度保ちながら増殖し、その方向によって外向性と内向性に分かれる。実際の癌組織において、予後や治療成績に大きくかかわるのは、癌細胞の増殖方向と浸潤・転移である。癌細胞の浸潤の開始は、はまだ上皮整合性を保った癌細胞集団の中からEMTが生じた癌細胞が出現することから始まると考えられている。そこで我々は癌細胞の局所浸潤におけるEMTの誘導機構において解析した。そしてEMT誘導時にどのように上皮整合性が失われるかをひとつの指標とし、E-カドヘリンやビメンチンの発現量をRT-PCRで、また発現分布を蛍光細胞染色で確認した。癌細胞のEMT誘導にはウィルスベクターを用いたSnail強制発現細胞の系を用いた。この系のメリットはクローニングする必要がないのでSnailの強制発現が安定してしまってp63などの下流遺伝子の発現が完全に制御される前の状態を解析できることにある。Snail強制発現によってすべての癌細胞にEMTが生じるのではなく、細胞運動させるトリガーが重要であることが分かった。それはSnailを強制発現させても細胞間接着が保たれた状態ではE-カドヘリンなど細胞接着因子は細胞膜に存在し機能的であり、逆に癌細胞に誘導スペースを与えてやると、細胞が動き出すと同時にSnailが核内で機能し始め、p63を含めた遺伝子群の発現制御が働き、さらにそれら分子の機能も失われることを示した。つまり、Snail発現すればすぐに上皮整合性が失われるわけでなく、細胞運動機構が動き始めた後に細胞のEMTへの変化の一端として生じることが分かった。
|